71歳のブラックスミス 2

2021年07月07日

71歳のブラックスミス。老練で達観した感じ、優しくてニコニコしながら大きく見守ってる、、そんなイメージを持つかもしれない。

だが杉本さんにはどれもない。

薪ストーブの工事やメンテに行くと、こんなお客様がたくさんいる。

現役を終え、大きな安定を手に入れ(薪ストーブも例えば終の棲家も手に入れ)、家族が幸せに巣立ち、日々の話題は明日の釣りの事か遠い家族の孫の事とか、絵にかいたような普通の幸せの話。これが一番のことなんだよなって日々思わされる事が多い。

こういう人は決まってみんな優しい。

いや、こういうもの得ると優しくなれるよね。

71歳のブラックスミスは目の先にそういうゴールは見ていない。

攻撃的で現役の兵隊みたいだ。

すぐに突撃準備が出来てるし、休んでいる時も塹壕での仮眠のよう。

一緒にコーヒーを飲んでいると、やっと辿り着いた登山のベースキャンプか止まらない工場が動き出すサイレンを待つあいだくらいほっとして落ち着かない。

“現役感”はその緊張感をもっている人だけが感じることのできるセンサーなのかもしれないけど、人と対峙した時にすぐにわかる。

若くても突撃も仮眠も卒業した人も、してきてない人もたくさんいる。

現役に向かって昔の兵隊だったころの話をする現役じゃない人も多い。

どっちがどっちって事もないけど、学びつづけるか、学んで得たものをつかっているか、みたいな。

 

ブラックスミスは現役なので、その背中などは見せない。

何か見たものがあるとすれば、受け手である俺が勝手に汲み取って感じただけ。

20歳違う自分は分岐点というか、選択を迫られているような気持ちになる。兵隊のままでいるのか優しい気持ちのジジイになるのか。

71歳のブラックスミスを目の前にするとそんな気持ちになる。

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